Phys. Rev. Dog

忙しい人のための物理雑学

素粒子理論ってなに? ー究極の理論を求めてー

究極の理論を求めて

f:id:q-Anomaly:20160118063247j:plain


素粒子理論分野では世界の全てを記述する究極の理論を探しています。現在分かっている限り、この世界は『電磁気力』『弱い力』『強い力』『重力』 の4つの力が全てを決めています。


これら4つの力は元々一つだったのではないかと多くの研究者達は考えています。
現在のところ 電磁気力弱い相互作用 は統一され(電弱統一:ワインバーグ・サラム理論)、そして 強い力 の理論(量子色力学)もすでにつくられています。これらを合わせて標準理論と呼んでいます。


数年前に発見されたヒッグス粒子ワインバーグ・サラム理論の最後の1ピースでした。あの時こそ電弱統一理論、そして標準理論の完成の瞬間だったわけです。だからあんなに騒がれたわけですね。



そして残り一つの重力ですが、こちらはまだ未完成です。
重力を量子力学の言葉で記述するのが非常に難しいことが知られています。


世界を記述するプログラム言語

f:id:q-Anomaly:20160118091358j:plain


素粒子理論の研究者達は主に場の理論』『弦理論』を使って理論を記述します。これらをプログラム言語に例えるならばラグランジアンはそのコードです。実は先に紹介した標準理論も場の理論で記述されていて、ラグランジアンはこんなかんじです。


f:id:q-Anomaly:20160118111754j:plain



世界のほとんど全て(重力以外)を記述するプログラムコードがこんなに短いなんてちょっと意外でしょ?



場の理論と弦理論の特徴をまとめるとこんなかんじです:

場の理論は歴史が古く、経験と知識が蓄積されていて素粒子にとどまらず広い分野で使われています。プログラマーさんのいう「レガシーな言語」というやつですね。どのような理論も近似的には場の理論で記述することができます。非常にパワフルな言語といえます。標準理論も実験と比較し、細かく修正しながらつくられてきたものです。
ただし、場の理論で重力を扱おうとすると理論が破綻してしまうことが知られています。

一方弦理論は比較的新しい言語で、場の理論と比べるとまだわからない部分があります。非常に高度な数学を扱う事でも知られ、使っている人も限られているようです。(他分野に応用しようという動きはあるようですが)
理論の記述の仕方もだいぶ特殊です。場の理論では実験からの要請で理論を記述するのに対し、弦理論では数学的要請から理論をつくります。
「この世界は11次元だ。なぜならそれ以外では理論が破綻するから」といった具合です。
場の理論とは逆に重力を自然に扱う事ができるので究極理論候補の一つとされています。